森啓輔企画vol.3 彫刻、何処でもない場所のカケラ
桑名紗衣子「My Phylogenetic tree」
■会期:2010年6月17日(木)〜6月27日(日)
6月23日(水)お休み
11:30〜18:30(最終日17:00まで)
■会場:switch point
〒185-0012 国分寺市本町4-12-4-1F
tel+fax 042-321-8956
http://www.switch-point.com
■アクセス:JR中央線国分寺駅下車 北口徒歩約5分
http://www.switch-point.com/access.html
■レセプション 6月20日(日)18:00〜
「彫刻、何処でもない場所のカケラ」と題して行われる本企画では、第3回に桑名紗子を迎えて個展が開催されます。現代において芸術 とは、固有のジャンルがより拡散していく傾向にあり、絵画、彫刻といった定義はますます曖昧になっています。むしろそれらの概念は今や意味を失効し、何ものをも意味しえないともいえるかもしれません。そのような各ジャンル間の脱境界化という状況にありながらも、 本企画においてはあえて彫刻への問いかけがなされます。固有の場や意味といった、伝統的な彫刻がもちえた要素を次々と喪失し、断片 化されていった彫刻。そのような、まさしくカケラと化しながらも無名の場所において立ち現われてくるのは、彫刻という名の亡霊かもしれません。しかし、たとえそれが「彫刻のようなもの」としかいいようがなくとも、先鋭的な活動をしている作家の作品を通して考察 することは、必ずや私たちを彫刻の「源- 点」⦆へと導くことになるでしょう。
桑名紗衣子はこれまでに、教会の窓枠の形状を模したレリーフに浮世絵の図像が描かれる「Windows08」や、自然物、既製品を梱包用の緩衝材で包み込み、それを型取ったセラミックの立体作品「Floated」などのシリーズを制作してきました。インターネットなどのメディア を通じ、既視感にみちた情報に日々さらされることで、私たちはリアリティを失調しているといえます。それは作品名が示すように、 つねに宙吊り状態のまま漂うような身体感覚として指摘できるかもしれません。 しかし、そのような希薄な現実感に対して桑名は抵抗することなく、あえて無防備であろうとしています。陶磁器の生成過程で不可避に発生する、釉薬の変化や亀裂などの形状の変質を受苦的に 受け入れることで生み出される作品は、装飾性をおびつつ鑑賞者にその存在を強く印象づけています。そのような作品とは、それがもつ荘厳さや重厚さに反比例するように、「存在論的な軽さ」を獲得しえた彫刻といえるでしょう。
現代の私たちにとって、世界のシステムがもはや認識不可能であることは疑う余地がありません。桑名にとっても、リアリティを欠いた疑似的な世界観に端を発するシミュラークルの交換は、あたかもゲームのごとく作品内で活性化されていくことになります。交換可能性が高められたキメラとしての作品にそれでもかろうじて存在する、系統樹のような不可視の関係性。作品同士がひとつの空間内に展示 されるとき、断片と化したそれらから私たちはどのような繋がりを紡ぎ出すことができるのでしょうか。
桑名紗衣子 KUWANA saeko
【略歴】
1982年 千葉県生まれ
2008年 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
2010年 武蔵野美術大学修士課程美術専攻彫刻コース修了
■問い合わせ先 kskmori@gmail.com 森啓輔(本展企画者)
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