森啓輔企画vol.1 彫刻、何処でもない場所のカケラ 伊藤純代「秘め事」

投稿日時 2009-04-03 13:52:41 | カテゴリ: 1.展覧会,個展

森啓輔企画vol.1 彫刻、何処でもない場所のカケラ
伊藤純代  「秘め事」

■会期:2009年4月9日(木)〜4月19日(日)
    4月15日(水)お休み
    11:30〜18:30(最終日17:00まで)
■会場:switch point
    〒185-0012 国分寺市本町4-12-4-1F
    tel+fax 042-321-8956
    http://www.switch-point.com
■アクセス:JR中央線国分寺駅下車 北口徒歩約5分
     http://www.switch-point.com/access.html
■レセプション 4月11日(土)18:00〜


 「彫刻、何処でもない場所のカケラ」と題して行われる本企画では、第一回に伊藤純代を迎えて個展が開催されます。現代において芸術とは、固有のジャンルがより拡散していく傾向にあり、絵画、彫刻といった定義はますます曖昧になっています。むしろそれらの概念は、今や意味を失効し、何ものをも意味しえないともいえるでしょう。そのような各ジャンル間の脱境界化という状況にありながらも、本企画においてはあえて彫刻への問いかけがなされます。固有の場や意味といった、伝統的な彫刻がもちえた要素を次々と喪失し、断片化されていった彫刻。そのような、まさしくカケラと化しながらも無名の場所において立ち現われてくるのは、彫刻という名の亡霊かもしれません。この「彫刻のようなもの」としか言いようのない現象について美術史的な観点から考察することは、必ずや私たちを彫刻の「源-点」へと導くことになるでしょう。

 伊藤純代は、在学時からぬいぐるみや人形、ドールハウスといった子どもが扱う玩具を素材として制作してきました。2009年1月の武蔵野美術大学大学院修了制作展で発表された、リカちゃん人形を型取りした発泡ウレタンとスタイロフォームによってつくられた巨大なドールハウス《doll house #1》が与えた鮮烈な印象は、記憶にも新しいことでしょう。そのような幼少期における「切る」、「裂く」という行為によって引き起こされる快楽と恐怖の記憶は、今なお伊藤にとって切実な問題であると同時に、誰にも打ち明けられず自身の内に隠さざるをえなかった秘密でした。この両義的な感覚を通じて成立する立体作品は、どこか鑑賞者にカワイイ印象を与えながら、一方で子どもの無邪気な感性だけがもちえるおぞましさをも感じさせずにはいられません。本展においても試みられる、既製品を用いた解体と再構築による行為とは、より親密な対象だからこそ向けられる愛情と憎悪であり、解体されてしまった彫刻を縫合する一つの可能性を示しているといえるでしょう。


伊藤純代 sumiyo ito

【略歴】
1982年  長野県生まれ
2007年  武蔵野美術大学彫刻学科卒業
2009年  武蔵野美術大学修士課程造形研究科彫刻コース修了


■問い合わせ先 kskmori@gmail.com 森啓輔(本展企画者)




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